犬と月

2002年8月2日 日常
くっ付いて歩いてみる。
行動を共にする。
暑さに負けて、ふと部屋に入る。
先客が居る。
それでもさり気なく寄り添ってみる。
部屋の中の人は減っていく。
二人っきりになる。
共に寝転がる。
手を伸ばす。
手に手を乗せる。
手の繋ぐ。
手を握る。
握り返される。
「このまま時が止まればいいよぉ」
『いけんって。泣くなって。』
「泣いてない……
 すき。むっちゃすき。」
『ありがとう。』
「あなたの事を想って涙を流しました。
 でも……1、2、3…3滴しか流れんかった。
 私って泣けん体質なんかなぁ」
『……。』
冷房のきく部屋は冷たく
繋いだ手はあたたかく

起き上がる。
起き上がらせる。
背中に回る。
背中に顔を擦り付ける。

甘える。

「……抱き締めてもいい?」
『それはいけん。マジ駄目だって』
「そうかぁ」

背中は揺れる。

自分は揺られる。

『俺揺れるのって好きなんじゃ』
「ふーん」
『いっつも揺れてんの。人と話すときとか。縦とか横に揺れてる。』
「マジで?」
『マジで。』

揺れる。 揺られる。

ふいに誰かの足音。

「あ、もういけん。オイこら離れろって」

無くなるあたたかさ。
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時計の針が真上でくっ付いてから暫く経って。

『夜遅いからお前もういい加減部屋に帰れ』
「いや。いやいやいや」
引っ張られる腕。
抵抗して座り込む。
『帰れぇー』
「いやーだ いやだ
 …………ほら、握手しよう?」
『またぁ?』

繋がる手。
2段階の握手。
とくべつなあくしゅ。

『これでさ、手はなさないんだろ?』

握りかえしてくれていた手は開かれる。
それでも離れない。

『……やっぱりぃ? あー』

呆れる声。
でも向けられるのは笑顔。
開いていた手は何故かまた握り返した。

無言のひととき。

『やばいって。マジでマジでやばいって』

無言で首を振る。
心地良い体温が離せない。

『ほんと今日早く寝ないと明日に響くからさ、
 早く寝てくれ。俺を寝させてくれ。
 マジで』

…………しかたなく離す手。
                                          
                                          
                                         
それはほんの一瞬の...

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